「今度よかったら、簡単な料理教えてくれない？」

ワトソン先生がそう言い、私は「もちろんです！」と頷く。

「ホームズさんも教えてって言ってました。一緒に作りましょう」

「ホームズも一緒か〜……」

料理を作っていた時に、ホームズさんに話しかけられたんだ。でも、ホームズさんは少しなら料理ができる。もっとレパートリーを増やしたいと言っていた。

そのことを話すと、ワトソン先生は苦笑する。

「和香がいるってなると、事件以外のことにも興味を持つんだよね〜……」

「そんなことないとは思いますよ？」

そんなことを話し、穏やかなお昼休憩を楽しむ。しかし、ガシャンと何かが割れるような音が待合室から聞こえてきた。ワトソン先生と顔を見合わせる。

「和香はここにいて」

真剣な目でワトソン先生はそう言い、部屋を出て行く。私はドキドキしながら耳を澄ましていた。

「すみません！花瓶を割ってしまって……」

女性の声が聞こえて来る。待合室には、私の用意した花が花瓶にさしてあった。ぶつかって割ってしまったのだろう。それより、この声に聞き覚えがある。