抱きしめて、離さないで





出てきたついでに飲み物でも買いにいこうかな。

そう思って自販機のある方へ歩き出すと、光は唸りながら着いてくる。




「なんかこう…日向の態度というか顔というか口調というか頭のてっぺんから爪先までっていうか」

「いや全部じゃん」

「なんっかむかつく。
初めて見たときから絶対仲良くなれないタイプだって思ってたけどやっぱりそうだった。
無理っ嫌っ風紀なんかやめようよぅふみぃ…」

「そんな無茶な……」



ていうか言ってることが大概理不尽だ。
前世に恨みでもあるのか。

思わず苦笑がもれる。

興奮冷めやらぬ光は、自分を落ち着かせるためかふぅ、とひとつ深呼吸をした。



「…それにさぁ」



そして突然語気を鎮めた。
光のその変化に私は数度瞬く。

隣を見ると彼女もこちらを見ていて、座った猫目とかち合う。



しかしなかなか切り出さない光に私は首をかしげた。



「それに、なに?」

「………ふみ」

「うん?」

「………さっき、やっぱりちょっと変だった。
………日向となにかあったの?」



どきっ、と心臓が跳ねた。

本当に鋭い。
人の変化をよく見分ける。

当たらずとも遠からずな追求に私は一瞬言葉を失った。



私は思わず光から視線をはずして、そのまま足元まで移動させる。

瞬時に脳裏を駆けたあの日の思い手が、じくじくと膿んでいるようにざわめく胸の奥を撫でていく。



別に、赤嶺とのことを光に隠したいわけではない。

それでも私の口が動かないのは、未だ消化しきれていないから。



きっとすぐに光は、私と赤嶺と、そして布施の間にあるぎこちない空気に気づいてしまうだろう。

私の気持ちがどうであれ、一切関わらないなんてできるわけがないのだから。