抱きしめて、離さないで





顔をあげて横を見ると、光はぎゅっと眉間にシワを寄せて、不機嫌を顕にしていた。



「ふみは謝ってるんだから、それで済むことじゃん。なんでそんなにきつい言い方するのよ」

「別にきつい言い方なんてしてない。
これが俺の普通だ」

「それが普通なら直した方がいいよ。
すっごい感じ悪いから」

「余計なお世話だよ」


「ちょっ、光?」



怒り出す光に対して日向くんはまさかの応戦体制で、言葉の応酬に唖然とする。
暗雲が立ち込めて、ちりっと散る火花が見えた。

口許がひきつるのを自覚しながら、私は光の制服の袖を掴んだ。



「ちょっとなに、どうしたの…」

「……だってこいつが…」



どうどうと宥めると、いまだ収まらないらしい光はさらに顔をしかめる。

そんな光がまたなにか言う前に私は日向くんを見た。



「もし明日予定があるなら私一人で行くから…」



光の前に少し体をずらして、私は彼らの視線を遮った。
おかげで赤嶺と布施の前にも出ることになるけれど仕方ない。

なにより早く話を終わらせたい。



ごめんね、ともう一度謝ると、日向くんは少し表情を変えた。
寄っていた眉を少し緩めて目を逸らし、はぁ、と一つため息をつく。



「…行くよ。委員長がいないのはまずいだろ。
……秋には悪いけど…」

「いや、おれは大丈夫だよ。
委員会の集まりじゃしょうがないし」



また今度付き合って、と続ける赤嶺。

しゅうって誰だ。と疑問に思って、あぁ、と思い至る。
赤嶺って下の名前秋一って言うんだっけ。

名前で読んでほしいとねだられたことがあった。
結局照れ臭くて呼べなかったけど。