ピカデリー・サーカスで起きた殺人事件は、犯人はすぐに特定することができた。現場にわずかだが指紋が残っていたためだ。

警視庁のデータベースで調べた結果、窃盗の常習犯のものと判明。その窃盗犯の居場所を明日から捜査する。

ジェファーソンは、ユキナとバーにいた。同僚に「いい加減食事くらい……」と何度も言われたためだ。

「ジェファーソンが誘ってくれるなんて、嬉しい」

カウンター席で隣に座ったユキナがジェファーソンに微笑む。ジェファーソンは「まあ、その、俺が奢る」と言った。

このバーに来るのは、ジェファーソンは初めてだった。ユキナを食事に誘った際に、「行きたい場所があるの」と言い連れて来られたのだ。

お酒を飲む場所とはいえ、パブとは雰囲気が違う。落ち着いた空間に、ジェファーソンは店内に流れるBGMに耳を傾けた。こんなに静かな空間で飲むのは初めてだ。

「いつもこんなところで飲んでるのか?」

ユキナに訊ねると、ユキナは曖昧に笑う。

「友達と一度来たきりよ。普段は飲まないから」