その日から、ユーリは毎日毎日『プレゼント』を片手に訪れる。




ある時は、赤い果実を。
林檎と言うのだと、教えられたソレは甘くて美味しくて、夢中で食べた。そんなオレを見たユーリは「お気に召したようで、何よりです」と笑っていた。




またある時は、蝋燭を。
いつも薄暗いこの空間が、温かな優しい灯に照らされて。心が温かくなった……ような気がする。その日、漸くユーリの顔をはっきりと見た。グレーの瞳が優しくオレを見ていて、気恥ずかしくなった。







ユーリが毎日くることが、いつのまにか楽しみだと思うようになっていた。


人間に対し、怒りと恐怖を覚えていたこのオレが。人間である彼女が来ることを楽しみにしているのだ。そんなオレに驚いたけれど、同時に嬉しくもあった。



……こんな日が、ずっと続くと良い。
そうすれば、オレは。夢を見ずに済む。

また、この脚で。蒼い、広い空を。自由に飛ぶ、そんな夢を。鎖で繋がれていなかった、あの時のように───


決して、叶うことのない夢を見ずに済むのだ。