当時のことはよく覚えてる。
『兄ちゃん!!』
赤目さんに抱き抱えられていた狼が血相を変えて俺とナイフの間に入り込んだ。
『お嬢様!!』
赤目さんが拳銃を向けて、打った時には遅かった。
ナイフは見事に狼の左耳に刺さった。
血を流して意識のない狼を抱えて泣き叫んだのをよく覚えてる。
「ー…あの日、坊ちゃんとお嬢様を家に残しておくべきではなかった。」
「…」
「旦那様と奥様と一緒に見送るべきだった。」
「…」
赤目さんは体を起こして俺の手を握る。
「…お嬢様の教育を命じられたのは旦那様です。
でもそれは、旦那様を恨んで欲しいからではない…」
赤目さんの目から涙が溢れ出す。
俺の手を握る手が震える。
「旦那様は気づいていたんです、自分の兄が来ることを。
そこで、それまでに強くなって欲しいと、お嬢様に教育を命じました。」
父さんは分かってたんだ。
いずれ自分の兄が狙って来ることを…
「私は…おふたりを教育し、お嬢様を殺し屋にするため、精一杯できることをしました。」
赤目さんは涙を零しながら話し続けてくれる。
「私は…教育者失敗です…」
「なんで…」
「幼い小さな少女1人守れなかった…」
狼…の事か…
「旦那様の傍で仕えていた私には分かっていたはずなのに…
回避できなかった…
お嬢様はそれから…死に物狂いで様々なスキルを身につけ、立派な殺し屋に育ってくれました」
…確かその時からだっけ。
狼から感情が少しずつ消えていったのは。
ーバタバタバタ!
…なんだ?
騒がしい…
「坊ちゃん!大変です!奥様が…」
母さんが…?
「橋川に連れ去られました!!」
…橋川…?
「坊ちゃん、行ってください。」
赤目さんは力強い目をして俺の背中を叩く。
そして立ち上がってどこかに行ってしまった。
「父さん!」
「虎!」
「母さんは?!」
「恐らく橋川の家だ!」
父さんは組員の指示をしている。
…狼は?
俺は狼の部屋を思いっきり開ける。
…いない…?
「最初に異変に気づいたのは狼だ。
連れ去られた後、すぐさま着替えて飛び出していったよ。
…私の制止も聞かずにね。」
…父さんが止めた…?
ああ、そうか、橋川は…
銃だけ出なく、スタンガンやライフルまで使う卑怯な組だ。
そんな所に単身で乗り込んだら…
「…くそっ、桜…っ」
俺は憔悴している父さんに変わって組員に指示を出す。
「相澤!お前は家の門を全て塞げ!
今動ける者!ふたグループに分ける!」
…この家を空にするわけにはいかない。
「ABDグループ!お前らは大神家に残り、頭を死守せよ!
CEFグループ!お前らは直ぐに狼の後を追い、狼の援護に回れ!
無理はするな!あくまで人質と狼を連れ帰ることにだけ専念しろ!
決して死ぬなよ!!」
俺は指示だけ出し、父さんを部屋まで連れ帰る。
「坊ちゃん、旦那様をお願いします。」
「え、赤目さん?!」
『兄ちゃん!!』
赤目さんに抱き抱えられていた狼が血相を変えて俺とナイフの間に入り込んだ。
『お嬢様!!』
赤目さんが拳銃を向けて、打った時には遅かった。
ナイフは見事に狼の左耳に刺さった。
血を流して意識のない狼を抱えて泣き叫んだのをよく覚えてる。
「ー…あの日、坊ちゃんとお嬢様を家に残しておくべきではなかった。」
「…」
「旦那様と奥様と一緒に見送るべきだった。」
「…」
赤目さんは体を起こして俺の手を握る。
「…お嬢様の教育を命じられたのは旦那様です。
でもそれは、旦那様を恨んで欲しいからではない…」
赤目さんの目から涙が溢れ出す。
俺の手を握る手が震える。
「旦那様は気づいていたんです、自分の兄が来ることを。
そこで、それまでに強くなって欲しいと、お嬢様に教育を命じました。」
父さんは分かってたんだ。
いずれ自分の兄が狙って来ることを…
「私は…おふたりを教育し、お嬢様を殺し屋にするため、精一杯できることをしました。」
赤目さんは涙を零しながら話し続けてくれる。
「私は…教育者失敗です…」
「なんで…」
「幼い小さな少女1人守れなかった…」
狼…の事か…
「旦那様の傍で仕えていた私には分かっていたはずなのに…
回避できなかった…
お嬢様はそれから…死に物狂いで様々なスキルを身につけ、立派な殺し屋に育ってくれました」
…確かその時からだっけ。
狼から感情が少しずつ消えていったのは。
ーバタバタバタ!
…なんだ?
騒がしい…
「坊ちゃん!大変です!奥様が…」
母さんが…?
「橋川に連れ去られました!!」
…橋川…?
「坊ちゃん、行ってください。」
赤目さんは力強い目をして俺の背中を叩く。
そして立ち上がってどこかに行ってしまった。
「父さん!」
「虎!」
「母さんは?!」
「恐らく橋川の家だ!」
父さんは組員の指示をしている。
…狼は?
俺は狼の部屋を思いっきり開ける。
…いない…?
「最初に異変に気づいたのは狼だ。
連れ去られた後、すぐさま着替えて飛び出していったよ。
…私の制止も聞かずにね。」
…父さんが止めた…?
ああ、そうか、橋川は…
銃だけ出なく、スタンガンやライフルまで使う卑怯な組だ。
そんな所に単身で乗り込んだら…
「…くそっ、桜…っ」
俺は憔悴している父さんに変わって組員に指示を出す。
「相澤!お前は家の門を全て塞げ!
今動ける者!ふたグループに分ける!」
…この家を空にするわけにはいかない。
「ABDグループ!お前らは大神家に残り、頭を死守せよ!
CEFグループ!お前らは直ぐに狼の後を追い、狼の援護に回れ!
無理はするな!あくまで人質と狼を連れ帰ることにだけ専念しろ!
決して死ぬなよ!!」
俺は指示だけ出し、父さんを部屋まで連れ帰る。
「坊ちゃん、旦那様をお願いします。」
「え、赤目さん?!」



