「アンタさ、どこで花蓮と知り合ったわけ?」
「えっと……」
「九州」

中学時代バスケ部だったという博貴の話を話題に、バスケ部らしい和音くんと話していると、突然ほとんど黙っていた雪音くんが話しかけてきた。
その問いに、俺ではなく九十九さんが目も合わせずに答えると、雪音くんは眼を見開く。
和音くんは前髪で眼が見えないのでよくわからない。

「は!? 花蓮、なんで!?」
「知り合いの家があるから。家賃浮くし」
「いや花蓮めっちゃ稼いでんじゃん!!」
「それほどでもない」
「花蓮」
「なに、雪音」

九十九さんが、雪音くんに呼ばれチョコレートケーキを食べるてを止める。

「入院したのと関係あんのか」
「……まあ、だいたいは」

そうとだけ言うと、九十九さんは再びケーキを食べだした。
雪音くんが深くため息を吐く。

「……気になるけど、話すつもりはないんだろ」
「まあね」
「俺には話してくれるっしょ? アーティスト仲間なんだし」
「お前は冬休みの学校課題済ませろ馬鹿なんだから」
「雪音くんつめたい」

和音くんがどよんと落ち込んでいるのをスルーし、コーヒーを飲み出す雪音くんは、少し不満そうではあったが、不安そうではなかった。

「……いいの? 雪音くん。知りたいんじゃ……」
「いいんだよ」

短くそう返した雪音くんは、魔法学校のネクタイ(緑)をきゅっと締め直し、じっと鋭い目線で九十九さんを捉えながら言い加えた。

「自分から話す気にさせてやる」