「泊まればいいのに」
「おい我が儘言うな」
「博貴のケチ」
「おい」

鍋食べて、お菓子食べながらゲーム大会して、時刻はあっという間に九時過ぎ。
絵流ちゃんは九十九さんと話したりないようで、とても残念がっている。

「花蓮、絶対またお話ししようね」
「……今度ごはんでも行こう」
「うん! 絶対!! またお話ししようね!!」
「それさっきも聞いた」

雅裕の家は博貴家の向かいなので、三人一緒に九十九さんと俺の乗るバスにずっと手を振ってくれた。
バスが出発して、隣に座る九十九さんを見る。

「大丈夫? 寝ててもいいよ。ちょっとかかるから」
「……いい。なんか、いろいろあったから寝れそうにない」
「……そっか」

俺が言い出したことというのもあるけれど、雅裕は家が厳しいし博貴には絵流ちゃんが居る。
だから、九十九さんは俺の家に来ることになった。

「(……まあ一度同じ部屋で寝てるし)」

なんとかなるだろ、と思考を始めようとした頭を休ませようとした。
のに。

「え」

目に入ってしまった、九十九さんのスマホ画面。
誰かと連絡していたようで、トーク画面が開かれている。
そこには、
"俺も会いたい"
そう、書かれていた。

「どうしたの」
「いや……画面、見えちゃって……」
「ああ」
「えっと……友達?」
「うん」
「そ、そっかー。どういう人?」
「んー……変人?」


**


「変人とか酷くね?」
「お前は変人だろ」
「弟に変人とかそれでも兄?」
「兄様と呼べ」

九十九さんに誘われて、翌日、カフェで会ったのは派手だけどとてもおしゃれでかっこいい、背の高いイケメン二人組だった。会話と雰囲気からして兄弟らしい。

「久しぶり、カズ、雪音くん」
「ホント久しぶり。急に入院とか言って音沙汰無くなるし」
「心配したんだからな」

この二人が例の和音くんと雪音くんなのか。
などと呑気に観察していると、突然二人は九十九さんを撫でる手を止め、俺をいい笑顔で見た。

「そんで、こいつは誰かな」
「随分弱そうだけど」
「椎野由弦。ハタチだって」
「はあ? 俺らより年上なの?」
「和音が老けてんだろ」
「雪音は精神年齢が老けすぎ」
「カズなんか見た目はヤンキー頭脳は赤ちゃんじゃん」
「そこまでじゃない」

怒涛のディスり合いが目の前で繰り広げられているのに、俺はついていけない。
和音くんが九十九さんの言葉にそこまでじゃないと言ったということは、少しはそうなのだろうか。

「そうだ花蓮、うちの服最近買ってる?」
「あ、そうだ買ってないから買おうと思って。ネットで買おうか迷ったんだけど」
「そっかそっかー、じゃあ今度空いてる日おいでよ。伊藤さん会いたがってたよ」

ストローを咥えながら、和音くんが言うと、九十九さんは珍しく嬉しそうに頷いた。

「僕はしばらくは暇。カズに合わせる」
「んー……急だけど明後日なら丁度シフト入ってるし、バイト終わる少し前に来てくれれば丁度いいかも」
「了解。明後日ね」

スマホのスケジュール帳に予定を打ち込む九十九さんを、無意識にレモンティーを飲みながら見る。

「花蓮、そいつが焼きもち焼いてる」
「えっ!?」
「え」

突然パフェを食べながら発言したのは、雪音くんだった。
彼氏と間違われなかっただけよかったのだろうか。

「ホントは雪音が焼きもち焼いてたんでしょ」
「お前指折るぞ」
「やめていい加減練習ちゃんと出ないと次の試合だしてもらえないんだから」