「へー元はこっちにいたんだ……」

結局準備は俺ら男子組がやることになり、九十九さんは絵流ちゃんとおしゃべり(というか絵流ちゃんによる質問大会)が行われていた。

「……あの」
「ん? あ、次花蓮が質問する?」
「……もしかして、モデル、の」
「知ってた?」
「芸能人詳しくないけど、知り合いのモデルと同じブランドで働いてるみたいだから……」
「え、知り合いのモデル? 誰?」
「雪音くん。楠雪音くん」

ぴくり、と俺の耳が反応した。
雪音くん。ゆきねくん。くすのきゆきねくん。
誰だか知らないけれど、あの九十九さんが誰かを名前で呼ぶなんて、

「(りょう、とかいう奴以外はじめてだ)」

「雪音君と知り合いなんだ! そっかそっか! いやいつ言おうか迷ってたんだけど、そのロンTも上に着てたアウターもあのブランドのだもんね!」
「うん」
「雪音君とどういった知り合いなの? まさか花蓮、元モデルとか?」
「……音楽仲間の兄弟」
「ギター持ってるもんねー。雪音君の兄弟って……あれ、林檎ちゃんはいとこだったよね?」
「林檎は知ってるけど学校違うし少ししか会ったことない。カズだよ。和音」
「あーアイツか」
「そろそろ食べれるからお皿貸して」
「あーお兄ちゃんキノコ入れないで」
「こういうときだけお兄ちゃんお兄ちゃんって……ほら」
「ありがとー」

絵流ちゃんの言う通りキノコを入れずに、それも絵流ちゃんの好きな豆腐を多めに入れた博貴は、雅裕にシスコンとからかわれ脇腹にチョップを入れ仕返ししていた。

「(にしても)」

カズって言ったよな、九十九さん。
あだ名で呼ぶほど、仲良いのか?

「……椎野?」
「え、ごめん、ぼーっとしてた。どうかした?」
「……なんか僕のことすごい見てたから」
「あー、ごめん、なんでもない」
「あっそ」

なんでもなくないです。
でも、雪音くんと和音くんというふたりが、少し、気になる。