客間に戻った途端、俺は比井野さんに掴みかかった。
「おいお前っ! 九十九さんになにして……!」
「それはこっちの台詞だ、何してくれてんだガキが」
聞いたことのない、比井野さんの低い声。
思わず怯み、手を離した。
…‥確かに、怖がらせたのは、泣かせたのは、俺だ。
「……すみません」
「落ち着いたならいいです。それに、謝る相手は俺じゃない」
九十九さんの顔が浮かぶ。
過呼吸になったときの苦しそうな顔、可哀想子なのだと言ったときの悲しそうな顔、俺らがうみうし。だと知ったときの輝いた顔、比井野さんにありがとうと言ったときの真っ赤な顔、さっきの、俺に怯えて泣いていた、顔。
「九十九さん…‥」
「座りましょう?」
布団の上に座ると、比井野さんがぽつりぽつりと話し始めた。
「まず、先程のキスは誤解です」
「は?」
「本当ですって。薬を飲ませたんです」
ああでもしないと頓服薬は飲んでくれないんです、と困ったように言った。
「薬……? って、それ、入院してたっていうのに関係ありますか?」
「入院していた、と本人から聞いたのですか?」
博貴の問いに、比井野さんは驚いたように問いで返した。
「はい」
「……そうですか……花蓮さんが……。花蓮さんね、自分のこと、全然話さないんです。俺にも、何も言ってくれなくて」
さっきの低い声とは反対に、弱々しく呟いた。
「……俺が今から言うこと、他言無用でお願いします」
比井野の言葉に、俺達は声を揃えてはいと返事をした。
「花蓮さんの叔父から聞いたのですが、花蓮さん、入院されて、自宅に戻ることが出来ず施設に行く予定だったそうです」
「それは……自宅でリハビリができないから……とかですか?」
「いえ。……まあある意味そうとも言えますが、そうではないのです。花蓮さんの母親が、帰ってくるな、と言っていたそうです」
「は……?」
そういえば、九十九さん、あのとき、
「……そういえば花蓮さん、言ってました。」
「大丈夫、お母さんが側にいるから、って。でも、母さんは、もう家には返せないよ、もう、面倒見きれないって言って、僕を捨てたんだ」
「花蓮さんが言ったのですか?」
「はい」
「……そうですか。……やはり花蓮さん、椎野さんを……いえ、なんでもないです。それで花蓮さんは、俺の元上司であるお父様に連れられ、お父様の実家である佐世保のこの家に退院して来られたのです」
「おいお前っ! 九十九さんになにして……!」
「それはこっちの台詞だ、何してくれてんだガキが」
聞いたことのない、比井野さんの低い声。
思わず怯み、手を離した。
…‥確かに、怖がらせたのは、泣かせたのは、俺だ。
「……すみません」
「落ち着いたならいいです。それに、謝る相手は俺じゃない」
九十九さんの顔が浮かぶ。
過呼吸になったときの苦しそうな顔、可哀想子なのだと言ったときの悲しそうな顔、俺らがうみうし。だと知ったときの輝いた顔、比井野さんにありがとうと言ったときの真っ赤な顔、さっきの、俺に怯えて泣いていた、顔。
「九十九さん…‥」
「座りましょう?」
布団の上に座ると、比井野さんがぽつりぽつりと話し始めた。
「まず、先程のキスは誤解です」
「は?」
「本当ですって。薬を飲ませたんです」
ああでもしないと頓服薬は飲んでくれないんです、と困ったように言った。
「薬……? って、それ、入院してたっていうのに関係ありますか?」
「入院していた、と本人から聞いたのですか?」
博貴の問いに、比井野さんは驚いたように問いで返した。
「はい」
「……そうですか……花蓮さんが……。花蓮さんね、自分のこと、全然話さないんです。俺にも、何も言ってくれなくて」
さっきの低い声とは反対に、弱々しく呟いた。
「……俺が今から言うこと、他言無用でお願いします」
比井野の言葉に、俺達は声を揃えてはいと返事をした。
「花蓮さんの叔父から聞いたのですが、花蓮さん、入院されて、自宅に戻ることが出来ず施設に行く予定だったそうです」
「それは……自宅でリハビリができないから……とかですか?」
「いえ。……まあある意味そうとも言えますが、そうではないのです。花蓮さんの母親が、帰ってくるな、と言っていたそうです」
「は……?」
そういえば、九十九さん、あのとき、
「……そういえば花蓮さん、言ってました。」
「大丈夫、お母さんが側にいるから、って。でも、母さんは、もう家には返せないよ、もう、面倒見きれないって言って、僕を捨てたんだ」
「花蓮さんが言ったのですか?」
「はい」
「……そうですか。……やはり花蓮さん、椎野さんを……いえ、なんでもないです。それで花蓮さんは、俺の元上司であるお父様に連れられ、お父様の実家である佐世保のこの家に退院して来られたのです」

