「比井野君」
「お久しぶりです、八雲さん」
なんとか花蓮さんを連れて九十九家に戻った俺は、花蓮さんの叔父であり、検察官の九十九八雲さんに会った。
「花蓮を見なかったか? 君と居たと聞いたんだが」
「花蓮さんなら、自室に」
「全く……こんなときに……まあ、彼女なら仕方ないか……」
八雲さんが花蓮さんのことを彼女、と言った瞬間、やはり、と納得した自分が居た。
「花蓮さんは、女性なのですね」
「あぁ。花蓮は九十九家の数少ない女性の一人だ。本人は、それを望んでいないらしいがな」
「と、いうのは?」
訪ねてみれば、八雲さんは俺を玄関外へ案内した。
「吸うか?」
「いえ、自分は」
「はは、禁煙中か」
「すみません」
「いやいいんだ。で、花蓮だが」
煙草に火を付け、吸うと、白い煙を吐いた。
風に煽られ、屋根の上まで舞っていくと、いつの間にか消えてしまった。
それを見て、なんだか、思ってしまった。
「まるでお人形さんみたいだね、巡査長さん? アンタの意思はどこにあんのさ」
そう花蓮さんが俺に、言ったとき、眼が、
「(死に場所を求めている、みたいだった)」
まるでこの煙のように、綺麗に消えて無くなってしまいたいとでも願うように。
そんな眼を、たった十七の少女が、してしまっていた。
「花蓮は、女で居たくないらしい」
「……は?」
「ただ、男にもなりたくないと言っていた」
「それは、どういう」
「八雲さん、比井野」
透き通った声にハッとして振り返れば、そこに花蓮さんが居た。
「八雲さん、自分で、話すから」
「……すまないね。では俺は母さんのところへ戻るよ。後で花蓮も、来てくれるか」
「……気が向いたら」
八雲さんが家に入っていき、花蓮さんを見る。
「(あ、まただ)」
また、あの眼をしている。
「花蓮さ、」
「こっち」
花蓮さんはヘッドフォンを着けて、歩き出した。
「お久しぶりです、八雲さん」
なんとか花蓮さんを連れて九十九家に戻った俺は、花蓮さんの叔父であり、検察官の九十九八雲さんに会った。
「花蓮を見なかったか? 君と居たと聞いたんだが」
「花蓮さんなら、自室に」
「全く……こんなときに……まあ、彼女なら仕方ないか……」
八雲さんが花蓮さんのことを彼女、と言った瞬間、やはり、と納得した自分が居た。
「花蓮さんは、女性なのですね」
「あぁ。花蓮は九十九家の数少ない女性の一人だ。本人は、それを望んでいないらしいがな」
「と、いうのは?」
訪ねてみれば、八雲さんは俺を玄関外へ案内した。
「吸うか?」
「いえ、自分は」
「はは、禁煙中か」
「すみません」
「いやいいんだ。で、花蓮だが」
煙草に火を付け、吸うと、白い煙を吐いた。
風に煽られ、屋根の上まで舞っていくと、いつの間にか消えてしまった。
それを見て、なんだか、思ってしまった。
「まるでお人形さんみたいだね、巡査長さん? アンタの意思はどこにあんのさ」
そう花蓮さんが俺に、言ったとき、眼が、
「(死に場所を求めている、みたいだった)」
まるでこの煙のように、綺麗に消えて無くなってしまいたいとでも願うように。
そんな眼を、たった十七の少女が、してしまっていた。
「花蓮は、女で居たくないらしい」
「……は?」
「ただ、男にもなりたくないと言っていた」
「それは、どういう」
「八雲さん、比井野」
透き通った声にハッとして振り返れば、そこに花蓮さんが居た。
「八雲さん、自分で、話すから」
「……すまないね。では俺は母さんのところへ戻るよ。後で花蓮も、来てくれるか」
「……気が向いたら」
八雲さんが家に入っていき、花蓮さんを見る。
「(あ、まただ)」
また、あの眼をしている。
「花蓮さ、」
「こっち」
花蓮さんはヘッドフォンを着けて、歩き出した。

