「ここ……僕が生き物好きになった切っ掛けの水族館なんだ」
「ずっと前に来たことがあるの?」
「覚えていないくらい、ずっと前。親戚の子供と、……他にも何人かで来た」
「そうなんだ」
九十九さんが他にも何人か、なんてまどろっこしい言い方をしたのは、そこに当てはまる人物を言いたくなかったのだろう。
「クラゲは、シンプルにミズクラゲが一番好き。落ち着く」
「わかるよ、それ」
「本当?」
「本当。空を写す巨大な鏡に揺れる満月、ってね」
「それ僕の詞なんだけど」
「うん。だいすき」
そう言ってはにかめば、九十九さんはそっぽを向いてぶっきらぼうに恥ずいやつ、と呟いて俺の手を引いて歩き始めた。
「ビードロクラゲ」
「タコクラゲ」
「ハナガサクラゲ」
「カブトヘンゲクラゲ」
ひとつひとつの水槽を覗き、プレートにある名前を読み上げていく。
「タコクラゲって愛嬌あるよね、かわいい」
「演奏してない、いゆさんじゃないときの椎野みたい」
「え、そう?」
「毒あるもん」
「そこなの?」
普段の俺って愛嬌あってかわいくて毒あるの?
「あ、ハナガサクラゲも好き。鮮やかで綺麗」
「ぬいぐるみとかないのかな?」
「九十九さんぬいぐるみすきなの?」
「……子供っぽいと思う?」
「かわいいからいいと思います」
「真顔やめて」
クラゲコーナーを抜ければ、もう残りあと少しだった。
「あ、ここに出るのか。お土産見てもいい?」
「ショーまで時間あるしいいよ」
二人でお土産ショップに入る。
入り口にあったイルカのぬいぐるみのくじの景品を見るに、昨夜抱き締めて寝ていたぬいぐるみはここでゲットしたものらしい。
「(あともう1つサイズ上があるのか)」
景品を横目で見て、中のぬいぐるみを見る。
妙にリアリティーのある魚やタコもあった。意外とかわいい。
「あ」
棚の一番上、隅っこに、最近よく見る赤い深海生物の大きいのを見つけた。
「(九十九さんのスマホに着いてる、メンダコだ)」
そういえば、九十九さんの部屋には沢山のぬいぐるみが溢れかえっていたが、このサイズのメンダコはいなかった。
「ずっと前に来たことがあるの?」
「覚えていないくらい、ずっと前。親戚の子供と、……他にも何人かで来た」
「そうなんだ」
九十九さんが他にも何人か、なんてまどろっこしい言い方をしたのは、そこに当てはまる人物を言いたくなかったのだろう。
「クラゲは、シンプルにミズクラゲが一番好き。落ち着く」
「わかるよ、それ」
「本当?」
「本当。空を写す巨大な鏡に揺れる満月、ってね」
「それ僕の詞なんだけど」
「うん。だいすき」
そう言ってはにかめば、九十九さんはそっぽを向いてぶっきらぼうに恥ずいやつ、と呟いて俺の手を引いて歩き始めた。
「ビードロクラゲ」
「タコクラゲ」
「ハナガサクラゲ」
「カブトヘンゲクラゲ」
ひとつひとつの水槽を覗き、プレートにある名前を読み上げていく。
「タコクラゲって愛嬌あるよね、かわいい」
「演奏してない、いゆさんじゃないときの椎野みたい」
「え、そう?」
「毒あるもん」
「そこなの?」
普段の俺って愛嬌あってかわいくて毒あるの?
「あ、ハナガサクラゲも好き。鮮やかで綺麗」
「ぬいぐるみとかないのかな?」
「九十九さんぬいぐるみすきなの?」
「……子供っぽいと思う?」
「かわいいからいいと思います」
「真顔やめて」
クラゲコーナーを抜ければ、もう残りあと少しだった。
「あ、ここに出るのか。お土産見てもいい?」
「ショーまで時間あるしいいよ」
二人でお土産ショップに入る。
入り口にあったイルカのぬいぐるみのくじの景品を見るに、昨夜抱き締めて寝ていたぬいぐるみはここでゲットしたものらしい。
「(あともう1つサイズ上があるのか)」
景品を横目で見て、中のぬいぐるみを見る。
妙にリアリティーのある魚やタコもあった。意外とかわいい。
「あ」
棚の一番上、隅っこに、最近よく見る赤い深海生物の大きいのを見つけた。
「(九十九さんのスマホに着いてる、メンダコだ)」
そういえば、九十九さんの部屋には沢山のぬいぐるみが溢れかえっていたが、このサイズのメンダコはいなかった。

