「うわっうわっ! 見てペンギンが博貴ん家の鍵追っ掛けてくる!」
「うおーすげーかわいー! って自分の鍵でやれよつーかいつの間に俺の鍵取ったんだよ!?」
「取ってないよー博貴ん家の合鍵だよー」
「わざわざ作ったのかよ!? 金かかんだろが言えばスペアキー渡すのに!」
「博貴イケメーン!」

動植物園ではしゃぐハタチの男子大学生は、子供より圧倒的に目立っていました。

「しのさんとろきさん仲良いな」
「だろ?」
「幼馴染みだっけ」
「そ。俺だけ高校から」

そう俺が言うと、九十九さんはすっと目を細めた。

「じゃあ、椎野と僕が幼馴染みだったら寂しくなかったね」

そう呟いて、九十九さんは博貴と雅裕の元へ駆け寄っていった。

「(……そうだな、九十九さんが居たら、俺は……)」

俺は、なんだ?

九十九さんにまで頼って、生きようってのか?


「……情けな」
「おいゆづー! ライオン観に行こうぜ!」
「レッサーパンダだろ」
「はー? 九十九さんはどっちがいいと思う?」
「ツシマヤマネコ……」
「「行こう」」



**



シャトルバスに乗って、動植物園系列の水族館にやってきた。

「うわ、イルカやば、かわいい」
「語彙力飛んでるぞ秀才くん?」
「テメェ馬鹿にしてんだろ馬鹿が馬鹿にすんな馬鹿」
「馬鹿しか言えないんですかー?」
「いいぜ、拳で黙らせてやるよ」
「へ、かかってこいよ」

ショープールの観客席で腕相撲を始めた馬鹿二人は放っておいて、九十九さんに案内されて階段を降りた。


「うわ、すご、なに、ここ」


そこは、深海のプラネタリウムだった