「おい馬鹿ゆづ」
「そのガキなんだよ馬鹿ゆづ」
「うわーしのさんとろきさんだ! 初めまして!」
「うわっショタの笑顔眩しい」
「ていうか待て雅裕、このショタ俺らのアーティスト名知ってっぞ」
「え、なに、うみうし。九州上陸?」
「馬鹿上陸はしてんだろ進出じゃねーの」
「それだ」
「お前ら感動の再会を喜べよ」

俺も馬鹿だが、やはり真の馬鹿は雅裕と博貴だったらしい。
馬鹿スリーピースバンドで大丈夫かうみうし。
バンド名馬と鹿に変えるか? あれ? なんてそれ苦いレモンの匂い??

「んで? このかわいいショタは誰かねいゆくん」
「九十九さんはショタ違うぞ」
「は?」
「何言ってんのこの天使がショタじゃないはずないだろでぃすいずしょた!!」
「おい雅裕馬鹿さ加減ヤバいからやめろ。九十九さん、自己紹介お願いします」
「九十九花蓮、十七歳、ネット上でシンガーソングライターやってます。男じゃないです。中性です」
「ちゅうせい……? よ、ヨーロッパ?」
「馬鹿が」
「いてぇ!! おい博貴叩くな馬鹿!!」
「馬鹿はおめーだ」

ぎゃんぎゃん騒ぐ博貴と雅裕。
二人を見て、九十九さんは何故か楽しそうだった。

「いつもこんな?」
「いつもこんな」


閑話休題。


「で? シンガーソングライターって?」

博貴が訪ねると、九十九さんはすうっと息を吸い込んだ。



--空を見てた

--僕はただ明日を祈ってた

--君を見てた

--僕はまだ話せないままで

--遠く音がした

--聞こえる筈もないのに

--だってここは深海世界

--愛しい君と一緒なら

--何処までも二人でいよう



「これ……」
「うわ、本物だ」
「深海のumbrella」



「僕の、アーティスト名」