しにたい。
非常にしにたい。

いや、いつも辛いがこんなにしにたくなったのは久しぶりだ。

元はと言えば、比井野のせいだ。
アイツがうっかりめろんぱんを家に入れたから僕のオーディオインターフェース壊されちゃって即日配達出来るの無かったからあんな時間に駅前の楽器店行ったんだ。

そこでまさか、

「(美人のおねーさん拾って帰るとか何考えてるんだ僕は)」

ああ昨日の僕を呪いたい。
でも。

「いい人、だったな」

わふっ、とめろんぱんが鳴いた。

「朝食、口に合うかな……食べてくれてるかな……」

わんっ、と元気よくめろんぱんが鳴いた。

「まあ、椎野もあっち居たらしいから味覚は似てるよな」


あっち、横浜。


「……あの単語聞いただけで過呼吸とか、……はは、弱いなぁ……」

わうー

「……帰ろっか」



家に着き、めろんぱんのリードを外して家に入る。

「あ、おかえりなさい」

例のおねーさんが、廊下からひょっこり顔を覗かせた。

「……起きたんだ」
「家主より遅くてごめんね!」
「いや、別に。長旅で、しかもあんなことがあって疲れてるだろうし」
「ありがとう……」
「あの、さ……朝ごはん、食べる?」
「え、でも俺お金が……」
「朝ごはんくらい出すよ。一人増えるくらい変わらないし」

あ、やっぱり。
このおねーさん、一人称俺タイプだ。かっこいい。