すう、すう、と微かな寝息。

「(うむ、寝れん)」

お風呂をお借りして、九十九君の親御さんのスウェットもお借りして、布団を敷いてくれたらしい部屋へ向かった。
が。

「(九十九君の部屋だとは思わないだろ)」

こんなに広いお屋敷だ、客間とかあるだろう。
何故だ。

だが。

ちらり、とベッドの上の九十九君のを見る。
残念なことに背中を向けてしまっているが、髪の毛から覗く小さな耳には幾つもピアス穴が空いている。

「(痛そ……そういや雅裕と、博貴も開けてたな。二人とも痛いつって一個ずつだけど)」

ワンダーランドのイタズラ好きな猫のパジャマを着た九十九君は、イルカのぬいぐるみを抱き締めて寝ていた。

「これ……絶対男に狙われるだろ」

小さく呟きながら、ズレた九十九君の布団を掛け直す。
すると。

「しぃ、の」
「あ、ごめん、起こし、た……?」

俺を呼んだかと思えば、すうすうと寝息を立てはじめた。

「(寝言、で今日あったばっかの男のこと呼ぶかよ……!)」


長旅で疲れ果てている筈なのに、寝れる気がしない。