プロローグ

たった10本の指から生まれる音。この音が俺を離してくれない。俺はずっと、過去に縛られている。



中学3年生の夏
俺には、友達がいない。まぁ、群れるのが好きではないから別に友達なんていらない。とひねくれている俺に担任の樋口先生はいつも話しかけてくる。今日の調子はどうだ。誰かと話せたのか。と色々聞いてくる。いつもいつもしつこいが、別に嫌いじゃない。いい先生だ。
「おい、川原!
進路調査表出してないだろ。早く出せよー。あとは
お前だけだぞ!」
やべぇ。ばれてた。こういう時の樋口はめんどくさい。でも、今は逃げようが無いじゃないか。しまった。
「川原、ちょっと指導室に来い。」
...これは、長くなりそうだ。

「だいぶ前から言ってるだろう。高校を選びなさいって。」
「そうは言っても決まらないんだからしょうがないじゃないですか。」
時間が無いことくらい分かっている。でも、行きたい高校が無いのである。
「お前、お世辞にも成績がいいとは言えないんだから選択肢は少ないだろ。その中で希望はないのか?」
そう。俺ははっきり言って頭が悪い。テストの順位は250人中238位だった。早く選んでたくさん勉強しないといけない。
「俺の成績で入れるならどこでもいいです」
いつものセリフを言った俺に樋口は、大きなため息をついた。
「そのセリフは聞き飽きたぞ、川原。適当に答えてないで、きちんと考えるんだぞ。分かったな。」
「はぁ~い。」
俺はやる気のない返事をして、そそくさと指導室を後にした。