騙し愛

「智くんはね、あなたと結婚する気満々なのよ。あなたのために智くんは働いて、あなたは家を守るの。素敵だと思わない?」

「お母さん、そんな考え古いよ。今は男女関係なく働くんだよ?家事も子育ても女性だけの仕事じゃないんだよ?」

「この町ではそういうしきたりなのよ。それに、蕾には恋人はいないんでしょ?お嫁に行きそびれたら、蕾は赤ちゃんを産めなくなるじゃない。そうしたら、お母さんは孫の顔も見れないし……。地元に帰ってきてくれたら、毎日孫の顔が見れるじゃないの」

「勝手なこと言わないで!とにかく、そっちには帰らないから!明日も仕事だからもう寝るね」

何度言っても、蕾の母親は言うことが同じだ。蕾はため息をつく。目を覚ましたバロンが蕾の手に頭を擦りつけ、甘えた。

「バロン、可愛い〜」

バロンを撫でながらテレビでも見て心を落ち着けよう、そう思いリモコンを手にした蕾の耳に、ラインが届いた音が入る。

「次は智則ね……」

蕾はテレビを見ることを諦め、スマホを見る。結婚の話を母親がした後は、決まって智則がラインを送って来るのだ。