騙し愛

「はい。父から会社を譲ってもらいましてこの若さですが社長をさせてもらっています。しかし、蕾さんをはじめ社員に支えられての社長ですが……」

俊は蕾に優しく微笑む。蕾はホッとし、母親と智則を見つめた。

「大企業とは言えないかもしれませんが……。年収はおよそ××億円。五年前にアメリカの××社と契約を結びました。三年前にもドイツの××社と契約を結び、近々オランダとポルトガルに支店を出す予定です」

俊はペラペラと会社の年収などを話し、母親と智則の顔色はポカンとしたものになっていく。智則が口を開いた。

「そりゃ、会社の社長だったらすごいけどさ。会社の社長ってことは、蕾は仕事をやめたら家事すらもしなくていいじゃねえか!家政婦でも雇ってんだろ?蕾から仕事を奪う気かよ?」

「私は、蕾さんの意思を尊重します。蕾さんが働きたいと言うならば会社で働いてもらいますし、家事も子育ても分担します。夫婦というのは、お互いに支え合うものでしょう」

母親と智則の顔が強張っていく。俊は、社員にすら向けたことのない圧力を二人にかけていた。