旦那の背中に向かって私は真っ直ぐに立っていた。


言葉を待つ。


言って少しして、後悔が自分を襲う。


浮気したとか言って、離婚届にサインしてあるのに今更何を。

しかも聞かれてもいないし、ましてや疑いもされてないのに。


ほんと、子供だ。


今更、何を試したいのか。



「どうせ、男をつくったんだろ。だから離婚を言い出したんだろ」


ゆっくりと振り返って旦那は言った。


「男なんて、つくっていない」


私は言った。


「男、できたんなら正直に言えば?」


口調がきつい。



「もう、お前とはやっていけない」



諦めに似た溜め息とともに呟く言葉。



ああ、私がこうなったのもやっぱり分かってはいないんだ。


私が寂しかった事とか、暴力を振るわれるたびに心が離れていきそうになるのが、分からないんだ。