拍子抜けした私は、トモの後を付いて店に入った。
昔からあるような落ち着いた暗いカウンターに私達は座った。
マスターに甘くないものを、とオーダーをし、私の左隣に座るトモを見た。
一度は会って食事をし、セックスをした相手だったが、まともに顔を見たのは今が初めての気がした。
焼けてはいない肌。
一重で切長の目。
以外と肩幅も広かった。
高野の落ち着いた雰囲気とは違って、トモはどちらかというと精悍な感じだ。
「真樹さんて、彼氏いるの?」
ウイスキーのロックを一口飲み、トモは言った。
私は、いないと答えた。
結婚している事や、仕事などプライベートな事はお互い一切知らない。
「嘘だろ?真樹さんみたいな人がいない訳ないでしょ」
「いないの。ていうか、もうすぐ別れるの」
私は名前の分からない少し青みかがったカクテルを飲んだ。
「そうなんだ、なんで?」
聞かれるとは思ったけど、やはり面倒くさいなと思った。
「合わなかったから」
と私は言った。
