『こんばんは。真樹さん、元気かな?』


トモだった。


会ってその日にホテルへ行った相手。

帰り際は嫌な別れ方をした。
なのに連絡が来るなんて。


私は返信を打つ。

『元気です。先日はごちそうさまでした』


あえて、こんな文章。

すぐにトモから返信が来た。


『また、良かったら会おうよ。またいつでも連絡してね』


私は返信せずに携帯を閉じた。


瞬間、ガチャリと鍵を開ける音がして、旦那が入って来た。


書いた離婚届を思わず封筒にしまいこんだ。

「夕食は?」

私は作っておいたシチューを温めようとキッチンへ向かう。


別れる話は今日でなくてもいい。

実家にも連絡して、話をしておかないと。




私は考えながら支度を済ませて、お盆に乗せてダイニングテーブルに向かった。

食事を並べる。

いつも通りの雰囲気。
雑誌を読みながら黙々と食べる旦那。

食べる時、犬食いのように顔を下に向けて食べる癖。

つむじを見ていたら、何故か好きだった時の事を思い出した。

雑誌を読みながらのくせに、食べるのが早い。

「おかわり」

ぼそっと言って、私にお皿を渡す。