夜、離婚届をバックの中に入れたままで、私は高野との待ち合わせ場所に向かう。


早く着いたかなと思っていたが、高野が先に着いていた。


私に気付き、こちらへゆっくりと歩いて来る。


ほっとする。



この人の、この穏やかな雰囲気が好きだ。



精神的にイラついていても、高野に会うと不思議と忘れる。


「少しの間、会ってなかったね」

高野は言った。


「そうだね、久しぶりだね。仕事は相変わらず忙しかった?」

ほんの一週間会ってなくても、久しぶりに感じた。


「真樹は綺麗だから、他に男が言い寄ってくるだろうし、誰か男ができたかと心配したよ」


高野は恥ずかしそうに言った。



少し胸がチクリと痛んだ。


「いないよ、そんなの。私は高野さんだけ」


言って私は切なくなり、高野の腕に抱きつくように自分の腕を絡めた。


なんだか、涙が出そうになった。