腰ほどまである長く綺麗な黒髪、華奢な体。その顔は幼く見えるが、ジェファーソンと同じ歳だ。この部署に一人だけのアジアの幼い顔に、多くの人の視線を集めている。

彼女は、ユキナ・サトウ。幼い頃に日本からイギリスに引っ越してきて、ロンドン警視庁の捜査官として働いている。今までは違う部署だったのだが、先月から急にこの部署に配属されたのだ。

「あなた、とても仕事熱心ね。こんな時くらい休んでもいいのに」

パソコンに映し出されたデータを見て、ユキナがジェファーソンに笑いかける。ジェファーソンは「いや、日本人の方が勤勉だろ」と顔をそらした。女性に見つめられ、頰が赤くなる。

「私はずっとイギリスに住んでいるから、国籍と見た目は日本だけどイギリス人だと思っているわ。イギリスにいるんだから有給はしっかり取るし、休憩もする!」

周りを見れば、ジェファーソン以外の捜査官はコーヒーを楽しんでいる。イギリスといえば紅茶だが、頭をスッキリさせるためにこの部署ではコーヒーを飲む人が多い。