ロンドン警視庁ーーースコットランドヤードとも呼ばれるこの組織は、世界的にも有名だ。多くの警察官が、日々事件と向き合っている。

その中に、殺人や強盗などの凶悪犯罪を捜査する部署がある。今日は珍しく事件がない。捜査員たちは束の間の暇を平和を噛み締めていた。

「ジェファーソン、今日の帰りにパブ行こうぜ〜」

パソコンで過去の事件のデータを見ていた捜査員ーーージェファーソン・ブラッドストリートは同僚に声をかけられる。ジェファーソンは顔を上げた。

「事件の通報がなかったらな」

「はいはい。神に祈っとくよ」

ジェファーソンはそう言い、再びパソコンに向き合う。未解決事件や逃亡犯のデータを見ていた。

「ジェファーソン、よかったらどうぞ」

同僚のものではない綺麗な声に、ジェファーソンはもう一度顔を上げる。そこには、黒いスーツを着こなした女性が淹れたてのコーヒーを手にしていた。

「あ、ありがとう……」

ジェファーソンはドキドキしながらコーヒーを受け取る。女性慣れはしていない。それを知ってか、女性はジェファーソンに近づく。