人魚のお姫様

選ばれてはいけないはずなのに、エラは選ばれた。それが嬉しくて、エラの頰を涙が伝う。それをディランが優しく拭った。その顔はとても優しいものだ。

「エラ、これからよろしくお願いしますね」

王妃が微笑み、エラは「はい!」と返事をする。嬉しくて、この恋をもっと感じてもいいんだと胸に手を当てた。

「……何でよ……」

殺気を感じ、エラは顔を上げる。王女の一人が水の入ったグラスを持って近づいてきた。

「こんな女に、何で負けなきゃいけないのよ!!」

グラスの水を王女はエラに叩きつける。否、エラに触れていたディランにも水がかかった。

「ちょっと……」

「何あれ……」

王女たちの声で、エラは自分の身に何が起こったかを知る。濡れたことで足がなくなり、魚の下半身になっていた。

「エラ、あなたは……」

王妃が驚き、言葉を失う。王女たちはエラに好奇の視線を向けていた。

「何あの化け物」

「ディラン様は騙されて……?」

「この国に不幸をもたらすんじゃ……」