人魚のお姫様

ディランの方を見れば、ディランは優しく微笑んでいた。それでも、エラは不安を隠せない。なぜなのか疑問があふれてくる。

「ディランと結婚し、将来この国の王妃となるのはーーー」

王妃の言葉に全員の顔が強張る。王妃は王女たちの前を通り過ぎ、使用人の横に立っているエラの前に立った。

「あなたですよ、エラ」

「えっ……？」

エラはもちろん、王女たちも呟く。すぐに「この人は踊っていませんよ！」という声がした。

「この勝負で本当に見てたのは、ダンスなんかじゃない……」

ディランがエラに近づき、おでこにキスをした。そして王女たちを見て言う。

「王女として人に優しくできるかどうかを見ていたんだ！よって、お前たちには俺の嫁に来る資格はない！」

使用人が転んでグラスを割ったのはわざとだったのだ。安堵し、その場に崩れ落ちそうなエラの体を、ディランがしっかりと腕を回して支える。

「これで、お前は俺の嫁になることが決定した。ダンスや王女として必要なことはこれから教える。いいな？」