人魚のお姫様

エラは、赤いリボンのついたドレスに身を包む。王女たちも美しいパーティードレスを着た。

「エラ、よく似合ってる。お前は何を着ても似合うな」

ディランはそう言い、エラの頰に優しく触れる。エラは「ありがとうございます」と微笑んだ。あなたが褒めるべきは私じゃない、そう言いたくなってしまう。

「では、最後の勝負となります」

王妃の声が会場に響く。

「最後の勝負はダンスです。誰が一番優雅なダンスを踊れるのか、見せてください」

王女たちは余裕の顔を見せるが、エラは顔を真っ青にする。ダンスなどやったことも見たこともない。

「大丈夫だ」

エラの不安を察したのか、ディランがエラに優しく触れる。その顔は自信ありげに微笑んでいた。

「エラならできる。俺がきちんとリードしよう」

「……はい」

選ばれるのは私ではない。だから、ときめいてはいけない。エラは何度も自分に言い聞かせる。

触れられるたびに、いつからか幸せを感じるようになっていた。ディランがそばにいてくれるのが、嬉しくなってしまっていた。