人魚のお姫様

なぜ、人間になれないのか。それはエラ自身がよくわかっている。でも、それを口にすることはできない。

「エラ、愛してる。必ず手に入れるからな」

ディランはお構いなしに、エラにキスを繰り返した。



翌日、今日でディランの結婚相手が決まる。エラは今日で王宮での生活は終わりか、とため息をついた。

ディランの隣にいるべきなのは、幼い頃から王女として楽器や外国語などを学んできた王女様だ。エラにできないことや知らないことを王女は知っている。

「おはよう、エラ」

今日も目を覚ますとディランが眠っていた。

「おはよう」

エラが微笑むと、ディランはエラを抱き寄せてキスをする。何度こうしてキスをされただろう。

「ディランはキス魔なの?」

エラが訊ねると、ディランは不思議そうな顔を見せた。

「キスは立派な愛情表現だろ?たくさんして何が悪い?」

「フフッ、あなたらしい答えね」

エラはそう微笑み、初めて自分からディランに口付けた。