人魚のお姫様

「また作ってくれ」

そう笑いながらディランに言われ、エラはとても嬉しくなる。

それと同時に、後ろから嫉妬を帯びた視線がいくつも突き刺さったのだが……。



翌日の勝負は、刺繍だった。誰が一番美しくできるかというもので、みんなが真剣な顔で取り組む。

エラは編み物や刺繍が得意なため、美しい刺繍を作ることなど容易いことだった。誰よりも早く花束の刺繍を完成させ、王女たちを驚かせていた。

自由時間ではディランと今度は二人きりでティータイムを楽しみ、夜を迎える。

「よし、誰もいないわね……」

エラは恐る恐る浴室へ入った。王宮のお風呂というだけあって、とても大きく広い。そんなお風呂は今はエラの貸し切り状態だ。

エラは濡れると人魚になってしまう。当然、そのことを王女や王妃は知らない。このことがバレれば、エラの身が危険だ。そのため、誰もいない時間を見計らって入浴している。

シャワーを浴びると、またエラの足は魚のものに変わった。ディランと何度もキスをしているが、人間にはなれていない。