人魚のお姫様

「エラはお菓子を作れるのか？」

ディランが不意に訊ね、紅茶を飲んでいたエラはびくりと肩を震わせる。

「大丈夫か？」

ディランがエラの肩を抱いたので、エラは「作れますよ！」と慌てて言った。ディランは王女の前でも平気でこんなことをするのだ。それに少しエラは困る時がある。

「食べてみたい」

ディランがそう言ったので、エラは厨房を借りてお菓子を作ることになった。作るのはパンナコッタだ。

生クリーム、牛乳、グラニュー糖を合わせて加熱し、粉ゼラチンを加えて混ぜる。型に注いで冷やせば完成だ。ここまで五分ほどしか経っていない。

「他の方よりは豪華さに欠けますが……」

そう言ってエラが差し出したパンナコッタを、ディランは「ありがとう」と言って受け取る。その顔は、とても嬉しそうだ。エラにだけ、ディランは笑いかける。

「うまい！こんな短時間で作れるとは……」

ディランはそう言い、あっという間にパンナコッタを食べ終えた。