ありったけの恋心をキミに

あの時の客だと気づいてもらいたくて、私はこと細かく、お店で交わしたやり取りを言い並べる。

けれど、なにを言っても佐藤くんは平静で、顔色ひとつ変えない。


「覚えてない」


きっぱりそう言いきられてしまう。


「え、あの……ニコッて笑いかけてくれて!」


あれから何ヶ月も経っているし、忘れられていても仕方がないけれど、どうにかして思い出してもらいたい。

あれは私にとってとても大きな出来事だったから。


「あっ、その時の私、髪をこう……ひとつに。ポニーテールにしてました!」


あの日のヘアスタイルが今と違うことに気づき、下ろしている髪を両手で集めた。


「この顔、記憶に残ってませんか?」


よく見てもらえるよう、一歩近づいたけれど。


「残ってないね」


佐藤くんは即答で返してくる。……なんだか、この話に興味がなさそうだ。