ありったけの恋心をキミに

「あ、これ使ってください!」


水道の蛇口を閉める佐藤くんに駆け寄り、ポケットから出しておいたハンドタオルを差し出した。

佐藤くんは大きく息をついてから目を合わせてくれる。


「……なんなんだよ、いったい」


そう尋ねられた時、ちょうど、外の強い風が開けっ放しのドアから入ってきた。スカートの裾が微かになびく。

私は顔の前に流れた髪を耳にかけながら、返す言葉を探す。

『 なんなんだよ』って、ハンドタオルを渡そうとしたことに対しての言葉なのかな? でも佐藤くん、私の手元を一度も見てなかったよね。……違う気がする。

なら、やっぱりぶつかったことに対して? ……けど、偶然ぶつかった相手に『いったい』とまで言ったりするかなぁ?


「……あ」


も、もしかして、佐藤くんは気づいてる? 偶然を装ってわざとぶつかられた、って。

そういえば、さっき、角を曲がるタイミングが少し遅れてしまった。慌てて走り出すところから見られていたのなら、怪しまれてもおかしくはない。

……うん、そう考えれば『いったい』と言われたことにも納得がいく。たぶん、わざとぶつかったことはもうバレているのだろう。