ありったけの恋心をキミに

それにしても今日は機嫌がいいみたい。

この流れでお願いすれば壁ドンとかしてくれるかも……。


「あ、あの、佐藤くんっ……」

「やらないよ?」


っ、どうやら思い過ごしだったみたい。

ダメモトで頼んでみようと考えたが、佐藤くんは鋭く察し、言葉にする前に断ってきた。

がっかりしていると、そんな私がおもしろいのか、佐藤くんはふわっと頬をゆるめる。


「……」


優しい顔。表情ひとつひとつに見惚れてしまう。

こんなふうになるのは私だけ? 彼女はいらないって言っていたけれど、彼を好きな人は何人いるんだろう。

そういえば、これまでに彼女がいたことってあるのかな?


「他には?」


横顔を見つめながら、佐藤くんの過去を想像していたら、突然、話を振られた。


「あっ……んと、お姫様だっことか!」

「そんなのばっかかよ」


慌てて返したけれど、変に思われてはなさそう。


「あ、自転車のふたり乗りもしてみたい!」

「捕まんぞー」


チャイム、まだ鳴らないでほしいな。


「公道はダメだけど、ふたり乗り専用の自転車が大丈夫なところなら!」

「……だから真面目かっ」


私は残りわずかなお昼のひと時を、時間を惜しみながら過ごしていた。