ありったけの恋心をキミに

「わかりづれーよ!」


困っていたはずの佐藤くんが、顔をくしゃくしゃにして笑っている。

笑っていることに驚くと同時に、胸の奥がどくんと大きな波を打った。


「失礼ってなんだよ。真面目かっ」


いつも冷静で、口数も人より少ない。そんな佐藤くんは笑う時だって静か。口の端をクイッと上げるだけなんだ。

なのに、今は……。


「大宮って本当おもしれーな!」


こんなふうに口を大きく開けて笑っている。

知らなかった表情に見惚れていると、ひとしきり笑った佐藤くんが軽く咳払いをして冷静さを取り戻す。


「他にはどんな憧れがあんの?」

「いっぱいあるよ!」


嬉しくなった私はすっくと立ち上がり、勢いよく壁に手をついた。


「壁ドン!」


続けて、自分の顎をつまんで持ち上げる。


「顎クイ!」


これらは少女漫画で学んだものだけど、男の子も知っているほど有名なのかな。佐藤くんは「ベッタベタだな」と笑っている。