ありったけの恋心をキミに

そして、映画の日を境に私と佐藤くんの距離は急激に縮まった。

佐藤くんは、お昼休みをひとりで過ごす時【来る?】とメッセージをくれるし、2、3日ごとに図書館へも誘ってくれるんだ。


「もう決まった?」


放課後の図書館で今日借りる本を選んだ私は、まだ本棚の前にいる佐藤くんに声をかける。


「んー。このふたつで迷ってるな」


見せてくれたのはライト文芸の小説2冊。

表紙を見ると、片方の著者に見覚えがあった。


「私だったらこっちかなぁ。前にこの人の本を読んだことがあるけど、それはすごくおもしろかったよ」


私、佐藤くんに慣れてきたのかなぁ。

一緒に過ごすようになって、会話ではもう緊張しない。


「ふうん。……それってどれ。ここにある?」

「ん? えっと……あ、これだ」


本を見つけ、表紙を見せようとしたのだけれど、本棚から引き出した瞬間、すぐ奪われてしまった。


「これにする」


佐藤くんはあらかじめ持っていた本を戻し、カウンターへと歩き出した。


「え、でも、こっちを読みたかったんじゃ……」


その場からまだ動けずにいると、佐藤くんは足を止め、首だけで振り返る。


「感想とか言い合えたら楽しいじゃん?」


頬しか見えない角度。表情はわからないけれど、声色はとても穏やかだった。

佐藤くんが以前より優しくなったと感じるのは、気のせい?