「きっ、来た！」


数分、曲がり角の向こうを見張っていたら、佐藤くんがひとりで現れた。

窓の外に目を向けながらこっちへ歩いてくる彼。予想通りの展開だ。

緊張してフレンチトーストを持つ手に力がこもる。


「……うまくいきますように」


壁から離れて小声でそう祈る私は、深呼吸をして、ぶつかる前の主人公が言っていたセリフを口にする。


「“いっけなーい！　遅刻しちゃう！”」


叫んですぐフレンチトーストを咥えた。いつでも走り出せるようその場で足ぶみも。でも、その足音が激しすぎたため、佐藤くんの気配を感じ取れなくなっていた。

同じタイミングで曲がるつもりだったのに、駆け出す前に彼の体の一部がちらっと見えてしまったの。出遅れたことに慌て、私は急いで一歩を踏み出す。