ありったけの恋心をキミに

いつもとは少し違う服装で向かった待ち合わせ場所。

肩を並べて映画館へ向かっているのだけれど、佐藤くんの私服姿を見るのは初めて。

グレーのロングコートは、前を開けて羽織っていたり。黒いマフラーの裾は、左右の長さをルーズに変えていたり。

シンプルな服を上手に着こなすところが大人っぽくて、なんだか全然知らない人と一緒にいるみたい。

だからかな。シアタールームではちょっと緊張して、手の握り方もぎこちなくなってしまったんだ。


「……なに?」


他作品の予告が流れ始めた頃、思いきって佐藤くんの手を握ったら、驚くような表情をされた。


「え?」

「や、これはなに?」


腕を上げ、重なったふたりの手を見せてくる佐藤くん。


「あ、それは……」


タイミングが悪かったのかな? でも、ドラマと同じようにしたつもりだけど……。


「“君の手は”っていうドラマで、映画を観ながら手を繋ぐシーンがあってね」

「……」

「すごくいいから……再現しようと思って!」


憧れていたことだから少し興奮気味に語ってしまった。

だけど、考えを伝えても佐藤くんは黙ったまま……。