その人は、私の前で止まって、「さみぃ」と白い息を吐いた。 「案外すぐ見つけられたわ」 …やばいよ、これは。 すれ違う人がみんな振り返っていた。 私服の尚くんは、想像以上の迫力だ。 黒のパーカーに黒の革ジャン、黒のデニムで全身真っ黒だけど、シンプルな色使いが整った顔を引き立てている。 こんなの、こんなの…格好よすぎる! 「私の方が絶対すぐ見つけたよ!!!」 「なんでムキになってんだよ」 門を潜り足を踏み入れると、楽しい音楽がそこら中から聞こえてくる。 カラフルな世界に一瞬で心が躍った。