低い声がなんだか、少しだけ心臓を揺らした。
なにもかも上手くいかない中、目の前の彼氏役だけは立派にその仕事を全うしようとしているこの現実が、なんだか少し笑える。
…バカだなぁ、私も、真琴も。
尚くんは今、どんな顔をしているんだろう。
気になるけれど背中を向けることしかできない。
「わ、わかったよ…」
「駅前のとこな。また放課後ここ来るわ」
「ん…」
尚くんとも話さないといけない。
だけど真琴にも、もうフリはしていらないって話さないといけないから、ちょうどいいのかもしれない。
そう思って返事をしたものの。
───────ガタン。
また隣で音がして。
反射的に振り返ると立ち上がった尚くんがいた。
