「マイケル!」



イデアは我に返ると、炎の剣を携えたマイケルの元へ駆け寄る。

既に力を出し切ったのか剣と翼は雲散霧消し、マイケルはイデアの腕の中に倒れる。

「ごめん……イデア……やっぱり僕の体力じゃ……アイツからは逃げきれ……なかったよ」

「ううん、私こそごめんなさい……! 私が敵の罠にはまったりしなければこんなことには……!」



マイケルの出血はかなり酷い。腹や肩を切り裂かれ、さっき立っていられたのすら不思議なくらいだ。

「ねえイデア……」

「マイケル?」



血のこびり付いた口を歪めて、彼は笑った。

「僕は『彼』を再び呼び戻した……僕は君の天使になれたのかな……?」

「もちろん……マイケルは私の天使だよ……! だからもうお願い、二度と離れないで……!」

「……そっか」



イデアの涙が頬を伝い、マイケルの顔に雨の様に落ちた。

「それなら良かった……」

「マイケル……? マイケル……⁉」



安らかに目を閉じるマイケルに、イデアは縋りつく。

彼の体は驚く程冷たい。今にも命の灯が消えてしまいそうな程に。

彼を救う手立てがないわけではなかった。

だけど、せっかく分かり会えたのに……この力を使えば、きっと彼はイデアに失望する。

――ううん、今更そんなことを恐れるなんて馬鹿げている。

例えマイケルがもう二度と私の天使になってくれないとしても……私はこれ以上罪を背負うわけにはいかない。

イデアはマイケルを強く抱きしめると、奇跡の名を叫んだ。



「『ガブリエルの箱庭!』」