「誰?」
振り返ると、昨日の朝話しかけてきたクラスメート三人がゆっくりとこちらに歩いてくるところだった。
「君たち、無事だったんだね……!」
マイケルが顔を綻ばせながら近づく。
「もしかして校舎には他にも生き残りがいるの? だったら……」
「マイケル! 危ない!」
イデアが叫んだ瞬間、赤毛の生徒が素早く後ろ手に持ったナイフでマイケルを切りつけた。
マイケルは危うくイデアに袖を引かれたおかげで難を逃れる。
「ちょっと、何するの⁉ まさか毒気にやられて頭がおかしくなったのか⁉」
仰天するマイケルに、イデアが冷静に告げる。
「違う、きっともう『試練』は始まってるの。彼らはいつもの彼らじゃない」
「だからどうすればいいんだ⁉ 生徒を傷つけることなんて出来ないよ!」
マイケルが叫んだ瞬間、再び彼がこちらを切りつけてきた。その顔に生気はない。
淀んだ瞳の向こうに映るのは底なしの暗闇だ。
「待って……今解決策を探してるから時間を稼いで欲しい」
「そんな無茶な……!」
ただでさえ体が弱く非力なマイケルが出来ることは少ない。
おまけに向こうは三人がかりだ。
マイケルは辺りを見話してサボテンに似た植物を見つけると、それを力任せに引き抜いて投げつけた。
「ぐああっ!」
赤毛の生徒の顔面に直撃してその場に崩れ落ちる。だが今のでマイケルの手は血まみれだ。
マイケルはもう片方の手で再び二つ目のサボテンを掴むと、激痛を堪えて投げ告げる。
二発目が二人目の生徒の肩にヒットし、動きが止まる。
「私に許された力……鏡、箱庭、炎剣……でも剣は私には使えない……」
「イデア! もうこれ以上は無理だよ!」
「生徒は普通人を襲わない……つまり真実の姿じゃない……ならそれを映し出せれば!」
イデアはマイケルの前に飛び出ると、目前まで迫った生徒二人に手をかざした。
「あるべき姿に戻って! ――『ウリエルの鏡』!」
瞬間、彼女の手が鏡に反射した光の様に輝いて二人を映し出し……それが収まった時は、生徒は四つん這いの無害なヤギに変貌していた。
「ヤ、ヤギ? イデア、今のは……⁉」
「私には生まれつき三つの力があるの。今のは『ウリエルの鏡』。対象の人物の真実の姿を曝け出す。昔、マイケルにも使ったでしょう?」
「え? ああ、そう言えばそうだったね」
箱庭で初めてイデアに会った時を思い出すマイケルの前で、イデアがヤギを見下ろす。
「彼らの場合はヤギ……悪魔の象徴ね」
「だから僕たちを襲ってきたのか……」
マイケルが呟いた瞬間、バンッ! と一斉に校舎のドアが開いて、大勢の生徒たちがナイフを片手にこちらへ疾走してきた。
「イデア、話は後だ! 今はこいつらを何とかしないと」
「で、でも、一度にこの数を相手に力は使えない! 一回の発動に三人を変えるのが限度よ!」
「ならこっちに来て!」
マイケルはイデアの手を引くと、毒々しい草木で覆われたイングリッシュガーデンの中に逃げ込んだ。
そのまま庭を突っ切り、校舎を目指す。
これだけの数が出てきたということは校舎内は今空っぽのはずだ。
なら逆にこちらが校舎に逃げ込めば勝機はある。
ツタやトゲが邪魔して思うように追いかけられない生徒を尻目に、二人は校舎内へ転がり込んだ。
先頭の追手が二人に襲いかかったが、イデアが『ウリエルの鏡』を発動してヤギに変え、難を逃れる。
「……上の階へ逃げよう……ここにいたらすぐに見つかる」
ゼェゼェと息を切らすマイケルにイデアが頷き、二人は上の階へ急いだ。
振り返ると、昨日の朝話しかけてきたクラスメート三人がゆっくりとこちらに歩いてくるところだった。
「君たち、無事だったんだね……!」
マイケルが顔を綻ばせながら近づく。
「もしかして校舎には他にも生き残りがいるの? だったら……」
「マイケル! 危ない!」
イデアが叫んだ瞬間、赤毛の生徒が素早く後ろ手に持ったナイフでマイケルを切りつけた。
マイケルは危うくイデアに袖を引かれたおかげで難を逃れる。
「ちょっと、何するの⁉ まさか毒気にやられて頭がおかしくなったのか⁉」
仰天するマイケルに、イデアが冷静に告げる。
「違う、きっともう『試練』は始まってるの。彼らはいつもの彼らじゃない」
「だからどうすればいいんだ⁉ 生徒を傷つけることなんて出来ないよ!」
マイケルが叫んだ瞬間、再び彼がこちらを切りつけてきた。その顔に生気はない。
淀んだ瞳の向こうに映るのは底なしの暗闇だ。
「待って……今解決策を探してるから時間を稼いで欲しい」
「そんな無茶な……!」
ただでさえ体が弱く非力なマイケルが出来ることは少ない。
おまけに向こうは三人がかりだ。
マイケルは辺りを見話してサボテンに似た植物を見つけると、それを力任せに引き抜いて投げつけた。
「ぐああっ!」
赤毛の生徒の顔面に直撃してその場に崩れ落ちる。だが今のでマイケルの手は血まみれだ。
マイケルはもう片方の手で再び二つ目のサボテンを掴むと、激痛を堪えて投げ告げる。
二発目が二人目の生徒の肩にヒットし、動きが止まる。
「私に許された力……鏡、箱庭、炎剣……でも剣は私には使えない……」
「イデア! もうこれ以上は無理だよ!」
「生徒は普通人を襲わない……つまり真実の姿じゃない……ならそれを映し出せれば!」
イデアはマイケルの前に飛び出ると、目前まで迫った生徒二人に手をかざした。
「あるべき姿に戻って! ――『ウリエルの鏡』!」
瞬間、彼女の手が鏡に反射した光の様に輝いて二人を映し出し……それが収まった時は、生徒は四つん這いの無害なヤギに変貌していた。
「ヤ、ヤギ? イデア、今のは……⁉」
「私には生まれつき三つの力があるの。今のは『ウリエルの鏡』。対象の人物の真実の姿を曝け出す。昔、マイケルにも使ったでしょう?」
「え? ああ、そう言えばそうだったね」
箱庭で初めてイデアに会った時を思い出すマイケルの前で、イデアがヤギを見下ろす。
「彼らの場合はヤギ……悪魔の象徴ね」
「だから僕たちを襲ってきたのか……」
マイケルが呟いた瞬間、バンッ! と一斉に校舎のドアが開いて、大勢の生徒たちがナイフを片手にこちらへ疾走してきた。
「イデア、話は後だ! 今はこいつらを何とかしないと」
「で、でも、一度にこの数を相手に力は使えない! 一回の発動に三人を変えるのが限度よ!」
「ならこっちに来て!」
マイケルはイデアの手を引くと、毒々しい草木で覆われたイングリッシュガーデンの中に逃げ込んだ。
そのまま庭を突っ切り、校舎を目指す。
これだけの数が出てきたということは校舎内は今空っぽのはずだ。
なら逆にこちらが校舎に逃げ込めば勝機はある。
ツタやトゲが邪魔して思うように追いかけられない生徒を尻目に、二人は校舎内へ転がり込んだ。
先頭の追手が二人に襲いかかったが、イデアが『ウリエルの鏡』を発動してヤギに変え、難を逃れる。
「……上の階へ逃げよう……ここにいたらすぐに見つかる」
ゼェゼェと息を切らすマイケルにイデアが頷き、二人は上の階へ急いだ。