「千夏、僕は何も言えない。でも……」

僕は泣きながら、千夏に言った。

「明日は、君が決めろ」

泣きながら千夏は頷いた。



季節は巡り、僕は高校三年生になった。今僕は大きな舞台に立っている。全国大会の会場にだ。

団体戦でここまで来れた。僕は副将として試合に臨む。

全国大会の決勝戦。ここまで来るのは苦労の連続で、仲間とぶつかったり支え合ったりの日々だった。

ここで負けたらそれで終わり。僕の……三年生の夏は終わる。

相手の高校と礼をし、先鋒から戦っていく。そしていよいよ僕の番が来た。今のところ、引き分けだ。

僕が相手と戦うため歩いていると、観客席から優しい眼差しを感じた。振り向くと、千夏が微笑んでいる。

千夏は手術をし、今はバリスタを目指して前を向いている。剣道はもうできなくなってしまったけれど、新しい道を自分で見つけた。

僕らは微笑み、心の中で会話をする。

「立ち向かう」

「怖くない」