今まであの手の質問をされると決まって
「憧れている人がこんな見た目なんよね。」
と答えていた。
嘘をつく事に慣れてしまった僕に毎回失望していた。
小さな頃、痛い時に痛いと言えなかった。
しんどい時にしんどいと言えなかった。
そのつけが今巡りに巡って、
しんどくないのにしんどいと言うようになっている。
なんて惨めで醜くて滑稽なんだろう。
彼女の背中はとても輝いていて、
衣服だけを整えた自分とは大違いだった。
目は先をみていて不安の中にも綺麗な輝きがあり、輝きを取り繕っている自分の目の奥まで見透かしているようだった。
もはや僕の目などは見ていなかったのかもしれない。
僕を透かして何か別のものを見ていた。
そんな事まで出来るようになっていた。
彼女だけではない。
ほとんどの人が新進気鋭のエージェントにみえた。
熱く夢を語り、今までの功績を語り、今まで抱いた女性の人数を語っていた。
どんなアルバイトも一週間かそこらで辞め、
彼女以外とは経験のない僕には付いていけるような話ではない。
自分も語っていいですか?まだ生き生きしていた時の事を。
まだ大器晩成を気取っていなかった頃の話を。