コイッペキ

両想いというのは。
少女漫画の世界、あるいはドラマの世界だけなのだと。
ヒナは思っていた。

ずっと見ていた、好きな人が。
彼氏になる瞬間。
魔法がかけられるのだろうかと感じた。
実際は、魔法はかけられず。
大量に涙を流して。目がパンパンに腫れて。
ピエールにビックリされたという事実だけが残ったのだが。

こんな幸せなことなんておこらないだろう。
一生分の運を使ってしまったのかもしれない。
「うわぁ…」
舞台袖の隙間から、観客を見ると。
満席で、更には立ち見までいるじゃないか。

ヒナは緊張で足が震えた。
もし。エマが主役だったら、凄いことになっていたに違いないだろう。
「ちょっと、ヒナちゃん。緊張しすぎでしょ!」
ヒナを見ていたエマが突っ込む。

9月末の学院祭。
予定通り、小学校の礼拝堂でシンデレラが開催されようとしていた。
シオンと晴れて彼氏彼女の関係になり。
合宿を終えて。
夏休みを楽しみ。
夏休み明けは再びピエールのスパルタレッスンに耐え抜いたヒナだった。

ガチガチと震えるヒナに。
そっとシオンが近寄る。
黙って、ヒナの手を握った。
「ヒナちゃんなら、大丈夫だよ」
ニッコリとシオンが笑った。
シオンの王子様の格好はあまりにも格好良すぎて。
ヒナは衣装を着たシオンを見た時、気絶しそうになった。
「シオン君。約束。覚えていてくれてありがとう」
幼稚園の時の約束。
やっと、ここで果たされる時がくる。
「ヒナちゃんはプリンセスだよ」


おわり。