コイッペキ

「俺がエマさんに初めて会ったのは、中1の時でした。学院に通ってた友達から『すっげー可愛い子がいる』って聞いて。一度でいいから、会ってみたくて」
素直に喋るチューキチを。
ヒナはどうしても嫌いになれないと感じた。
「思い切って、学祭に行ってみたっす。でも、会えなくて…」
「…中止になっちゃったもんね」
学祭に詰めかけたエマのファンの中に。
チューキチもいたのかとヒナはガッカリした。
「でも…、その後。会ったんすよ。道端で。たまたま」
チューキチは目をキラキラと輝かせた。
ホタルとヒナは黙って話を聞く。
「すんげぇ、美人さんで。あまりにも綺麗で…。それから俺の頭の中、その子でいっぱいになっちゃって。でも学校が違うし話すこともなくて」
「で、そこからどうやってヒナを利用することにたどり着いたのかな?」
意地悪そうにホタルが言う。
「あの…、決して本当に箕輪っちのことを利用するつもりなんてなかったわけで。あ、でも本当に結果としてこうなっちゃったというか…」
「うん…」
ヒナは小さく頷く。
「俺。本当は公立の高校に行くつもりだったんです。まぁ…自分で言うのも変なんですけど。母子家庭なんであんま家が裕福じゃなくて…ハイ」
「ぼし…かてい」
衝撃の事実にヒナは驚く。
初めて知った事実だ。
「でも。俺、どうしてもエマさんと同じ学校に通いたくて。でも私立だとお金かかるし。でも、行きたいし…。そしたら、担任だった先生が『奨学金制度があるよ』って教えてくれて。入学試験で上位2名だけ奨学金制度の資格を与えられることができて。しかもお金は返す必要のない奨学金制度だからって。ただ、死ぬ気で勉強しなきゃ駄目だって言われて…」
「それで、上位2名に入ったの?」
ヒナは驚いたまま、尋ねた。
「まさか、学年でトップになれるとは思わなかったす。駄目元で受けて、奨学金制度をゲット出来て。晴れて、この高校に入学出来て…。でも、エマさんと喋る機会なんてないわけで」
「ふーん。だから、ヒナを利用したのか」
さっきから、冷たく言い放つホタルを見ていて。
ヒナは何だか無償に腹が立ってきた。
「すんません。実は、俺。最初、箕輪っちとエマさんが幼なじみだって知らなかったんです」
「え?」
「俺、箕輪っちとエマさんが仲良しだって知ったのは田中から聴かされて…」
「ええ!?」
ヒナは驚いて、のけぞりそうになった。
ホタルは黙っている。
チューキチは腕をぽりぽりと掻いた。
「何で、エマのこと好きなくせに、私のこと知らなかったの?」
「俺、基本的にエマさんの周りの人物。目に入らないんすよねー」
あっさり。
チューキチが真顔で言うので。
ヒナは何も言えなくなった。
「いくら、友達でも。俺は田中みたいな卑怯な手は絶対に使いたくなかった。箕輪っちを傷つけてまでエマさんと仲良くなんてなりたくなかった…」
「チューキチ君。でも君は、自分の良い方向に物事を進めたわけだろ? それは無意識じゃないと思うんだよね」
「ホタル…。もう、いいじゃない」
うんざりとした表情で、ヒナはホタルを見る。
「チューキチ君は決して私を傷つけなかったよ。それどころか、エマを助けてくれた」
「わかってないなー。ヒナよ」
そう言うと。
ホタルは、チューキチの肩に手を置いた。

「じゃあ、今度は君が俺達に協力してくれるかな?」