コイッペキ

大浴場に行ってお風呂に入り終えて。
ヒナは、部屋に戻って。
部屋にいたオハルにお礼を言って部屋に戻ってもらった。

ベッドで眠っているエマを見ると。
さっきよりかは顔色がよくなっている。
「色んなことあったんだね…」
ヒナは独り言を呟いた。

トントンっ。

ドアを叩く音がして。
ヒナは急いで、ドアを開けた。
目の前に立っていたのは、ホタル、シオン、チューキチの3人だった。
慌ててヒナは部屋を出て。
ドアを閉める。
「エマちゃん調子どお?」
そう言って、ホタルはスーパーの袋をヒナに手渡した。
ヒナが中身を見るとスポーツドリンクやのど飴が入っていた。
「ホタル、わざわざ買いに行ってくれたの?」
「勿論! 何かあったら俺に言ってな」
そう言って、ホタルは笑った。
「エマは今、ぐっすり眠ってる。ちょっと疲れちゃったみたい」
ヒナは小声で言った。
「良かったっすー。エマさん元気そうで」
いや、元気ではないよ。
ヒナはチューキチに対して、心の中で突っ込んだ。
そんなチューキチの横で。
不機嫌そうにシオンが立っている。

そもそも、どうしてこの3人がわざわざ来たのだろう?
どことなく、シオンとチューキチの間にビミョーな距離が出来ているのをヒナは感じていた。
「ヒナ。ちょっと、お願いがあるんだけどさ」
急にホタルが申し訳なさそうな表情をする。
「ちょっと、片付けが残ってるんだけどさー。女の子の手も必要でさー。ついでに、チューキチ君も手伝ってくれるとありがたいんだけど」
「え、今!?」
ヒナはビックリしてホタルをガン見した。
「シオン、悪いけど。ちょっとの間だけ。エマちゃんの側にいてくれるかな?」
そう言って、ヒナが持っていたスーパーの袋を奪って。
ホタルはシオンに渡した。
「ああ、大丈夫ですよ」
そう言って。
シオンは部屋に入った。

パタン。

夜の廊下で静かにドアの閉まる音が響いた。
(最初からこういうつもりだったな…)
ヒナはホタルを睨んだ。
初めから、シオンにエマの面倒を見てもらうために。
わざわざ3人でヒナの元へ訪れたのだろう。

「いやー、ヒナ。チューキチ君。すまんねー。人手が足りなくてさ」
移動しながら、ホタルが言った。
「全然、大丈夫っす!」
疲れているはずなのに、明るく答えるチューキチ。

ずんずんと、一人歩いていくホタルの後ろを。
ヒナとチューキチが追う。
廊下は静かだ。
時折、どこかの部屋からか。笑い声がする。
ヒナは、何の手伝いをさせられるのだろうと思っていたが。
ホタルは誰かの部屋に入っていった。
「ん? この部屋で何するの?」
ホタルに続いて、チューキチとヒナが入る。

2人部屋だった。
ベッドの側には、見覚えのあるボストンバッグが置かれている。
すぐにこの部屋はホタルとチューキチが寝泊まりしているところだということに気づいた。
「ホタル、手伝いって何?」
ヒナは思わず、ホタルを睨んだ。
「まぁ、ヒナさん。お座りなさいな。チューキチ君も座って」
いつも呼び捨てにしているヒナを、「ヒナさん」と言うホタルに。
どこか恐怖を感じながらも、ヒナはベッドの上に座った。
向かい合って、チューキチもベッドの上に座る。
「さて、やっと落ち着いて話が出来るね」
ホタルは笑った。