コイッペキ

ヒナと折本が顔を真っ赤にして言い合っているところに。
現れたのは、シオンだった。
シオンは青白い顔で折本の側に寄る。
突然のシオンの登場に折本は、「きゃー」と悲鳴をあげた。
「折本は良い奴だと思ってた。周りは俺のことを腫れもの扱いして、いつも一歩引いた位置で見ていたけど」
「シオン君?」
不安げに折本はシオンを見つめる。
「高校に入学した時。嬉しかったんだ。フツーに折本が俺に話しかけてくれたこと」
急に何を言っているのだろうと。
ヒナは思った。
急速に顔の火照りが冷えていくのを感じる。
「中学の時、急に折本が学校を辞めて。でも、また高校でフツーに俺に話しかけてくれた時。ほんといい奴だなって思った」
シオンはゆっくりと、折本を見る。
「折本がエマに嫌がらせしていたの、知ってたよ」
「シオン君、私。何もしてないよ」
今更、何言ってんだ。
ヒナは顔を歪めて折本を睨んだ。
「俺は、おまえが大嫌いだ」
シオン君は真顔になった。
「俺のこと好きだって言ったけど。俺を殺そうとしたってことでしょ?」
「シオン君、何言ってるの? 大丈夫?」
大丈夫なのかは、おまえだー。
と、ヒナは心の奥で叫ぶ。
「うん。俺は大丈夫。でも、はっきり言うよ。お前は俺を殺そうとした。俺の妹や大切な人も傷つけた。だから、俺はお前が大嫌いだ。消えて」
ゆっくりと、はっきりと。
シオンは折本に向かって言った。
そして、ゆっくりとだが。
冷たく、シオンが笑ったようにヒナは見えた。

「…私は、あんたなんか最初から好きじゃないし」
涙声で折本が言うと。
ふんっ! と言って。走って部屋から出て行ってしまった。