コイッペキ

その時。
無理矢理でも手を振り払って。
逃げていれば…とヒナは後悔する。
でも、突然のことでどうしていいのかわからなかった。
何よりエマはみるみると顔色が真っ青になっていって。
もう、言われるがまま状態になっていた。

体育館裏は。
人気はなく。
日陰でじめじめとしていた。
それでも暑くて。
顔から汗が止まらない状態だった。

女子生徒2名は乱暴に手を放すと。
またモデル女子の後ろに立った。
「あんたさ、人の彼氏に手を出してどういうつもり?」
綺麗な顔立ちで乱暴な言葉を吐き捨てるモデル女子。
「彼氏って誰ですか?」
エマが表情一つ変えずに言うと。
モデル女子はまた、ちっと舌打ちをした。
「とぼけても無駄だからね! あんたも知ってんだろ!」
と言ってモデル女子はヒナのほうに視線を向けた。
「知りませんけど…」
小さく答えると。
モデル女子はカバンからスマホを取り出した。
「私の彼氏、まーくんだよ」
まーくんって誰だよ。
ヒナは心の中で叫んだ。
が、モデル女子が見せてくれたスマホの画像を見て。
「あ…」と声を漏らした。
ヒナに告白してきた男子の一人だ。
しかも一番タチの悪いヤツで家にまでついてこようとした…

見覚えのある人物に。
ヒナは固まる。
「人の彼氏奪いやがって何様のつもりなんだよ」
だんだんモデル女子の言葉が乱暴になる。
「私、その人と喋ったこともないんですけど」
エマが答えると。
モデル女子は「はぁ!?」と言った。
完全なモデル女子の思い込みだ。
ヒナに告白してエマの情報を手に入れようとした男だが。
決してエマとは一度も話してはいない。

「あんたさ、周りに可愛いって言われて調子こいてんじゃねーよ」
低い声でモデル女子が言うと。
カバンからモデル女子は何かを取り出した。
カバンから出てきたのは。
…カッターだった。

「あんたみたいな奴は痛い目遭ったほうがいいよ」