コイッペキ

勉強会は想像以上に上手くいった。
ホタルの手巻き寿司が良かったのか。
チューキチの天然な会話が良かったのか。
お昼後の勉強会では。
すっかりとシオンとエマの表情からは緊張が消えていた。

そんな2人を見ながら。
チューキチ君って凄いんだなとヒナは感心した。
元々、人見知りしない性格だっていうのは見ていてわかっていたけど。
あの森兄妹の鉄の心を打ち溶かすなんて。
凄い人なのではないかと思った。

勉強会が終わると。
エマはどこか丸くなったような気がした。
具体的にどこがと問われたら。
上手くは答えられないけど。
ピリピリした緊張感が抜けたように思えた。
学校に行くのに、どこか余裕があるかのように思えた。

「やっと試験が終わったね!」
エマが両手を上に上げて。
背伸びをする。
今日、全教科の試験が終わって。
あと数日学校に通えば夏休みに突入する。

毎日寝る時間を惜しんで勉強していたヒナは。
青白い顔で「そうだね」と頷いた。
とりあえずは、家に帰って寝たいと思った。

昇降口を離れると。
すぐに汗が噴き出る。
ねっとりとした湿度と。
まるで刺すような痛みを感じさせる直射日光で。
すぐにぐったりとする。
早くバスに乗りたいと思って。
校門側まで来た時だった。

「モリエマさん」
背後から女子の声がして。
エマが振り返り。
続いてヒナも後ろを向いた。
そこに立っていたのは、雑誌から飛び出したような。
スタイルの良い女子生徒が1名。
その女子から一歩下がって2人の女子生徒がこっちを睨んでいる。

多分、2年の先輩だろうなとヒナは思った。
そして、ふと。
そのモデルのような女子生徒の後ろに立っている女子のうちの一人が。
いつかのハンバーガーショップで出会った女子だということに気づいた。
あの時は髪の毛を下ろしていたけど。
今日はポニーテール姿だ。
「ちょっと話せないかな?」
ニコっと笑うモデルのような女子生徒に。
エマは怖い顔をした。
「すいません、用事があるので。早く帰らなきゃいけないので。すいません。さ、ヒナちゃん行こう」
そう言って。
エマはヒナの手をつかむ。

「あら。大丈夫。すぐ済むから。体育館裏に来てくれる?」
「え、ですから急いでるんですけど」
エマが大声で言うと。
チッとモデルのような女子生徒は舌打ちをした。
「いいから、来いよ」
と低い声で言った。
その瞬間、モデル女子の後ろに立っていた女子2名がエマとヒナの手をつかんで。
引っ張った。